校舎を出て寮に帰ろうとした時、ちょうど校庭でダンビラを振っているを見かけた。華奢な腕を懸命に動かして素振りをしている。いつになく真剣な表情を見て、伊達はそうっとしておくべきだと思ったが、考えている通りの行動ができない。 「。せいが出るじゃねえか」
声をかけた伊達の方を振り返り、はとてつもなく嫌そうな顔をした。お前か、とでも言わんばかりである。
青空あれは昨日のことだ。 驚羅大四凶殺で受けた傷が癒え、塾長に八連制覇の話を持ち出された。まさか助けられて生き長らえるとは思っていなかった上に、再び男塾の門をくぐるようになるとは全く予想もしていなかったことである。 「今日からお前ら一号の仲間になる伊達、雷電、飛燕、月光じゃ!」
鬼ヒゲに紹介された。案の定、教室中にどよめきが走った。それもそのはず、つい最近まで敵だった者が急に仲間になると聞かされると誰でも動揺する。 「なっ?!」
なぜここに女がいる? 「さっきから何だ? 人のことじろじろ見やがって!」 休み時間、その女――が伊達の元に来た。華奢で優しそうな顔からは想像もつかない喋り方だ。 「驚いたのだ。まさかここに女がいるとは思わなかったからな」
しん、と教室中が静まり返った。 「てめえ……」 ドンっとは伊達の机に拳を叩きつけた。
「表に出やがれ! 決闘だ!」
桃がすぐにを止めに入った。背後からはがい締めにされつつも、伊達を睨むのは止めない。 「何がおかしい?」 伊達が思わずフッと笑ったのを察知して、は顔を赤くして突っかかってきた。女だと気づかれないように、女みたいだと言われると必要以上に怒るのだろう。 単純な奴だ。ここはひとつ、騙されたふりをしておいてやるか。 伊達はの目を見て、 「女と間違えて悪かったな」
と謝った。 「分かればいいんだ。こっちも怒鳴ったりして悪かったな」 穏やかな顔に戻った。ころころと表情の変わる奴だ。伊達は面白さを感じずにはいられなかった。 「何か用か?」 が刀を振る手を止めて聞いた。伊達が何かケチをつけてくるのだと決め付けたような態度で、キッと睨んでいる。それなら、期待を裏切らないでおこう。
「なんだ、その中途半端な素振りは。あれで人が斬れると思ってるのか?」 顔を赤くして、伊達を睨んできた。例の、燃えるような目だ。
「お前、もっと筋肉をつけた方がいい。又は戦法を変えるか、だな」 さて、どう出るか? 興味深くを見ると、当の本人は目を見開き、 「そうか!」 納得した。 「やっぱ俺にはそういう戦い方の方がいいみたいだな。さっそく練習法を変えるぜ」 と、伊達に笑顔を見せた。 かわいいじゃねえか。
笑顔を見て、改めて伊達はを見る。今はまだ幼いところが残っているが、もうしばらくするといい女になるだろう。 「八連制覇、がんばれよ!」
さっきの怒りはどこへ行ったのか、は爽やかに手などを振り、走って行った。 伊達は校門を出た。澄み切った青空が清々しく広がっている。
青空:終
伊達さん、仁蒋さんを女だと見抜くほどのやり手なので、泣く泣く一瞬で男装のさんを見抜いたってことに。 とりあえず、男塾全(イケメン)キャラ制覇を目指そうって言うことで。 今年もよろしくおねがいします。次は飛燕で。 冬里
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