疾風の彼女刀身に錬成陣を描き終えた刀を見て、はため息をついた。刀は銀色の鈍い光を放ってこちらを見ている。まだ使わないのか、まだ斬らないのか。そう問いかけて止まない。 呪われた日本刀。 スカーは金属類破壊の術でこの刀を破壊しようとした。しかし、そんなものでは破壊できるわけがない。なぜなら……。 そこまで考えてはベッドの方を見た。
第六話 レンキンジュツシ 謹慎処分を言い渡した男はの気も知らずに寝ている。刀を収めて服を着ようとクローゼットに近づくと、ゴソゴソ音がした。ベッドを見るとロイが起き上がってこちらを見ている。寝起きなのでまだ目は開けきっていない。
「どこへ行く気だ?」 そう答えたが、信じられないとでも言いたいのか、ベッドから下りてこちらに来た。もう寝ぼけ眼ではない。の腕を掴んで、軍にいる時の厳しい表情を見せた。
「いいか、今日から二週間、外出禁止だ」 の言葉にロイは掴んでいた腕をはなした。
「今日も仕事?」
嫌味ではなく、あきれては言った。 「だから私もマジメにやろうと言うのだ。大人しく寝ていろ。まだ早い」 確かに、時計を見るとまだ六時だった。いろんなことがあって、眠れなかったためにいつもより早く起きていたのだ。はしぶしぶ、ベッドに戻る。着替えはあきらめた。ロイが出てからでもいいだろう。何しろ二週間も時間がある。二週間、刀を持って外を出歩けないのだ。ゆっくり寝たり、家でくつろいだりできる分、刀が振れない。 「体がなまってしまう」 ベッドに潜り込み、ロイを見上げながらはつぶやいた。
「どうしても運動がしたければ家の中でやれ。とりあえず今日は一日中引きこもっておいてもらう」 つまり今日もロイが来るというわけだ。もしかすると謹慎中はここに住み着くのかもしれない。それはそれでいいか、とは思う。 「じゃあ、軍部にある本か図書館の本を借りてきて。おもしろそうなの」 次の査定までに研究を進めておくのも、いいかもしれないと思った。ロイはうなずいて、娘でも見るかのような目での頭をなでた。行ってくる、とつぶやいて行こうとするロイの腕をはつかむ。 「どうした?」 振り向くロイに、は起き上がってキスをした。唇に軽く当たる程度のキス。 「大人しくしてるから」 と、伏し目がちになる。長いまつ毛が頬にかかり、白い顔に美妙な影をおとした。ロイはを抱き寄せ、額に口づける。 「すぐに帰る」
残業はしない宣言をして、ロイは出て行った。テーブルに置いてあったカギがいつの間にかなくなっている。ちゃっかり持って行ったらしい。同じテーブルに置いてある刀を見た。 それでも、錬金術師なのだ。
目を開け、はクローゼットに行く。今日は花柄とレースをふんだんに使ったお嬢様系のドレスを着よう。つばの広い帽子を被れば顔は見えないだろう。刀はスカートの中に隠せる。 「さて、どこに行こうか」 軍部の目をくぐりぬけて、独自でスカー探しをしてもいいだろう。とにかく、暴れる場所がほしい。
なんか、連載の題を15のお題からとりまくってますね。いいのかこれで・・・? 個人的にスカー好きなので、もっと絡ませたりしてみたいです。 冬里
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