男だらけで夜勤となると、決まって猥談がついてくる。
その日もハボック、フュリー、ハルマン、ブレダの四人でコーヒーを飲みながら猥談に花を咲かせていた。純朴そうなフュリーは顔を真っ赤にしている。
四人がそれぞれの武勇伝などを語り終えた時、ロイ・マスタング大佐が入ってきた。
「ほう。猥談とはなかなか洒落たことをする」
得意気な顔で四人を見渡した。所詮お前達の経験はこの俺の足下にも及ぶまい、と言わんばかりだ。
四人とも、げんなりした。嫌な奴が来たと思う。
ふと、ハボックはこんな大佐にも初体験というものがあったのだろうかと気になってきた。思いついた側からもう、口に出ている。
「初体験? ああ、よく憶えているとも」
ロイは懐かしそうに目を細め、そして語りだした。
永遠なんていらない
【ロイ・マスタング大佐ドリーム小説書きさんに15のお題】より。お題13.
彼女を知ったのは士官学校でのこと。ロイが16歳という若い頃だ。
彼女は一つ上の先輩で、常に主席という才媛だった。美人で、優秀。教官からの覚えもよく、同期生からも好かれている。もちろん、後輩からも憧れられた。これほどまでに揃った人材は又とない、と校長まで言うほどだ。
しかしロイは、自分も主席であったことから、先輩とは言え彼女をライバル視していた。噂だけで、まだ見たことのない彼女。
名前は、・。
いつか彼女よりも自分が「又とない人材」と言われるようになろう。そういう一心でロイは勉学等に励んだ。
ところが、彼女の方からロイに近づいた来た。
「あなたがロイ・マスタング君?」
ふわりと軽くパーマのかかった髪に、大きな瞳、細長い手足。まるで妖精みたいだった。
「私、・。よろしくね」
何も言えなかったのは、あまりにも彼女がキレイだったからだろう。今は女性慣れしているロイでも、この頃は若かった。
差し出された手を握る。握手して、彼女は隣の席についた。そう、図書室だったのだ。試験前なので勉強をしていたのだった。
当然彼女も勉強をしに来たのだろう。そう思ってちらりと横目で彼女を見ると、本を読んでいる。タイトルは『宇宙戦争』 なんと、フィクションである。
「先輩、それは?」
「あ、これ?」
は微笑んで、タイトル名を言った。それは分かっている。
「じゃなくて、試験前なのにどうしてそんな本を?」
「関係ないわ。前から読んでるから中断させるわけにはいかないし」
変わった先輩だと思った。
そう、その時はマイペースな先輩だな、と思ったくらいだったのだ。
先輩に誘われて、一緒に帰った。
ロイは寮生だったが、彼女は寮ではなく一人暮らしなのだとか。
それを聞いて少なからず胸が高鳴った。先輩はどうしてそんなことを教えるのだ?
「ここが私のアパートなの」
彼女は微笑んだ。ロイはまた穏やかではない心地になる。
アパートはレンガ造りとなっていた。その二階だと言う。
「ちょっと寄って行く? お茶でもご馳走するわ」
無邪気な先輩の言葉に、ロイは真っ赤になった。
今日知り合ったばかりで部屋にあがることはできない。そう思ってロイは首を振った。そう、あの頃のロイは純情だったのだ。
「そう。残念。おいしいケーキがあったのに」
は悲しそうな顔をした。
うつむいて、寂しそうにしている。
そうだ。寮に入らず、一人暮らしなのだ。きっと寂しいこともあるだろう。その年で一人暮らしを強いられるのも、何か複雑な事情があるのかもしれない。
「やっぱり、お邪魔させていただきます」
思い切って言うと、彼女は嬉しそうに笑顔を見せた。
ロイの手をとり、アパートに連れて行く。
そして……。
「ええと、先輩?」
ロイはベッドに座らされ、服を脱がされていく。はふふ、と妖しく微笑んだ。さっきまでの無邪気な表情ではない。艶っぽい、大人の女性の表情だ。
ロイがの部屋にあがると、彼女は紅茶とケーキでもてなしてくれた。
その紅茶を飲んで、ケーキを食べていると、何だか夢見ごこちになっていったのだ。そして、気がつけばベッドに座らされ、服を脱がされている。
「どういうことですか、先輩?」
「あら、マスタング君たら顔が真っ赤よ?」
は手を休めない。あっという間に全部脱がされた。
「へえ。マスタング君の、大きいね」
じろじろとその部分を見つめられて、かなり恥かしくなる。
の手がそれを握るのを感じた。そして、そのまま上下に動かされる。
「先輩、何を?」
「そんなヤボなこと、聞かないの」
は手の動きを早めた。
ロイにおびただしい快感が押し寄せてくる。やがて、
「だめだ、先輩、もう……」
ロイは果てた。
先端からほとばしった白い液体は、もしかしたらの顔にかかったのでは。心配になって、彼女を見る。
ロイが果てる直前にティッシュでもあてがったのだろう。彼女はどこも汚れていなかった。
「ごめんね、ロイ」
いつの間にかロイ、とファーストネームで呼んでいる。
「私、こういう病気なの」
「病気?」
「時々、変な気分になって……。つい男の人にこんなことをしてしまう」
また悲しそうな顔をする。
ということは、今まで色んな男にこのようなことをしていたか。ロイは嫉妬してしまった。
は立ち上がり、そしてロイの横に座った。
士官学校の制服に、裸の男。なんて奇妙な組み合わせだ。
「本当にごめんね。ロイにはこんなことしないでおこう、って決めてたところなのに」
つまり襲う価値のない男だということか、とロイは落ち込んだ。
ところが、の言っていることを聞いていると、それは違うのだと気づかされた。
「ずっと好きだったの」
そう言われて驚いた。
ロイは今日初めてに会ったが、の方は遠くからロイのことを見ていたのだとか。
「ねえ……」
はロイの手をとり、自分の胸に持っていった。
「だからこんなにドキドキしてる」
その言葉に火がついて、気がつけば今度はロイが襲う番になっていた。
彼女の服を脱がし、口を吸う。
首筋から胸に唇を這わせ、乳首を吸った。
その度には悩ましげな声をあげるので、それでまた興奮する。
下着を脱がせ、彼女の花弁を押し開き、敏感な部分を下で転がす。
「ロイ、初めてじゃないのね?」
「いいえ、初めてです」
「どこでそんなの覚えて……あっ」
しつこくその部分を舐めまわしていると、やがては一段と高い声をあげて弓ぞりになった。そして息を切らせ、敏感な部分がひくひくしている。気がつけば彼女の愛液でシーツは大きなシミをつくっていた。
ロイは抑えが利かなくなって、自分自身を彼女にあてがう。
どこがの中への入り口なのか分からないが、こういうものは本能だろう。えい、と押し入ってみると、案外すんなり入った。がすでに男を知っているということだ。それにまた嫉妬してしまい、その感情がロイの腰を動かせた。
「あっ、ロイ!」
抵抗するかと思ったが、はロイの背中に腕をまわした。
彼女の中は温かくて、締め付けてくる。入れただけでもう果ててしまいそうだ。
それを堪えて、ロイは腰を動かした。
その度には悩ましげな声をあげる。
彼女の胸は大きくて、普段の細い姿からは想像できないほどだった。それが激しく揺れ動いていた。
早く、深く突き上げていく。
だんだんと体が痺れてきて、頭が白くなってきた。
「ロイ、もうだめ!」
彼女の悲鳴を聞いて、安心した。ロイももうすぐイキそうだ。
「いきますよ、先輩」
あえぎあえぎそう言うと、さらに深く激しく突いた。
そして、
「ああっ」
がロイの肩を噛んでくる。その痛さも感じないほど、ロイは快感に身を任せていた。こんなに気持ちがいいとは思ってもみなかった。
精液が彼女の中に出ている。それを感じつつ、ゆっくりとから身を離した。
「ええと、大佐……いいっすか?」
ハボックが手を挙げる。
「あの、中出しはやばいっすよ」
「ああ。あの頃は若かった」
ロイは思い出に浸っているようで、遠くを眺めていた。
フュリーが顔を真っ赤にしながら尋ねる。
「それから、さんとはどうなったんですか?」
「ああ。ちゃんと付き合ったさ。そして振られたさ」
急に声のトーンが落ちた。フュリーは嫌なところに触れてしまったと後悔し、焦る。しかし、そんなに焦ることはなかった。
ロイは、ふっと笑う。
「彼女とふれあった時間は特別なものだ。それが永遠に続くと、価値がわからなくなってしまうだろう。永遠なんていらないんだ」
永遠なんていらない:終

ロイの裏が書いてみたいと思い、なぜかこのお題でやってみました。
しかも、最後に慌ててムリヤリお題と結びつけてしまうという荒業。あーあ。
変なヒロインですみません。ダメ出しとかあればどうぞ。
冬里
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