かえり道リレー小説企画! 第一話
「勇二! 帰ろっ!」
勇二はちょうどバッグを持って立ち上がったところだった。こちらを見てうなずく。
「、勇二、またなー!」
弾平くんが大事なボールを磨くのを中断して手を振ってくれた。珍念くんも、尾崎キャプテンも、みさとも口々に「また明日!」とか「気をつけて帰ってね」などと挨拶をしてくれる。
「みんな、また明日ねー!」
勇二と一緒にドアを出る時、皆に手を振って別れた。
「どうした? さっきからニヤニヤしてるぞ」
校門から出た時、勇二に聞かれた。
「そりゃ、こうやって二人きりで帰るのが久しぶりだし!」
言うと、勇二は少しだけ寂しそうな顔をした。そして、
「兄貴のやつ、先帰るってよ。用があるわけでもないのに」
やっぱり気を利かせてくれたんだ、勇一さん。なのに、それに気づかないなんて勇二は鈍感すぎる!
「勇二!」
キッと彼を睨んでやった。怒ってます、というような顔を一生懸命つくって。でも勇二は、のんびりした調子だ。
「どうした?」
言ってから、ちょっとキツく言い過ぎたかなと思って、
「私は、嬉しいんだけど」
とつけ加えた。それから恥かしくなって、勇二の顔をまともに見れずにうつむく。
「俺も、嬉しい」
勇二がぽつりと言った。
「今、何て?」
勇二に顔を近づけて聞いてみると、思い切り顔をそむけられた。恥かしがってるのかな、と思ったのも束の間。勇二が手を握ってきた。
家まで送ってくれて、勇二は帰ろうとした。
「待って、勇二」
用事もないのに呼び止めた。
「そうだ、今度の日曜は練習休みでしょ? 一緒にどこか行かない?」
ここのところ練習ばかりで、デートしていない。たまには二人きりでどこかに行きたい。遊園地でも、映画でも、どこでも。勇二と一緒ならどこでもいい。
「今度の日曜……悪い!」
勇二は頭を下げた。
「その日は火浦さんと約束があるんだ。すまない!」
聞いたけれど、答えは返ってこなかった。また明日な、と言って勇二は暗くなった道の向こうに走り去って行く。
「何よ、それ!」
文句を言う相手はもう行ってしまった。
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