Talking on the Bed

 電気を消しても、そうすぐに寝れるもんじゃない。ベッドの上で、黒い天井を見ながらヒソヒソと、みさととおしゃべりをした。藤堂さんが隣の部屋なので、聞こえないように、本当にヒソヒソ声だ。
「みさとって、弾平君のこと好きだったんだ。ごめん、気づかなかった」
「いいのよ。気づかれないようにしてたんだから」
「でも、言われてみると必要以上に弾平君を叱ったりしてたなあ」
「もう、からかわないでよ。さ、あたしの恋暴露は終わったわ。はどうなのよ?」
「私……」
 好きな人か、と言っても、そんなこと考えたことなかった。人を好きになるって、どういう気持ちになるんだろう。それを言うとみさとは、うーんと考え込んで、
「その人を見たり、その人のことを考えただけで胸がドキドキする感じかなあ」
「へえ。じゃ、みさとって弾平君の前でドキドキしてたんだ?」
「だから、からかわないでって!」
 そんなみさとが、何だかステキだ。大人に見えてくる。
「でも、惜しいなあ。大河君がいつも見てるの、気づいてないの?」
 みさとがつぶやいた。
「見てる? 誰を?」
 みさとが、私のほっぺに指をさした。
「私?」
「そうよ。ついでに言うと、嵐君、陸王君もそうね」
「学校、違うのに?」
「バカねえ、関係ないわよ」
 みさとは、どうしてそんなことが分かるんだろう。陸王さんは、私が一人で道を歩いているとよく声をかけてきて、一人でも平気なのに危ないからって送ってくれる。だから私のこと、少しは気に入ってくれてるのは分かる。けど、
「嵐君は、冷たいよ?」
 弾平君のおじいさんのお寺に来てたから、挨拶したら「ああ」って言っただけで、そっけなかった。高山君や宇佐美君は、普通に挨拶してくれたのに。B・Aが海外のチームと親善試合するから応援に行った時も、「球小からスパイに来たのか?」って言われたし。どちらかと言うと、嫌われてるのだと思う。
「好きな人の前でどう接していいか分からないから、つい冷たくなってしまうのよ。分かるなあ」
「嫌われてるんじゃないの、私?」
「まさか。が陸王君とか大河君とか、他の男子とかと楽しそうに喋ってるのを見ると、いつも不機嫌になるもん」
 そうなんだ。知らなかった。みさとって、よく見てるんだなあ、と思う。
「言い忘れてたけど、勇二君も、あれは好きだね。私の言うことは聞かなくても、の言うことなら素直に聞くし。いいなあ、モテモテで」
 みさとの言ってることは本当かどうか分からないけど、モテモテだと言われるとどうしていいか分からない。
「本当に、好きな人いないの?」
 また、聞かれた。私はうなずいた。
「この、ぜいたく者! 代わって欲しいわよ!」
「でもみさと、好きな人にはモテなくて、そうじゃない人にはモテるのと、好きな人だけにモテるのとでは、どっちがいい?」
「好きな人だけにモテるのがいい」
 みさとは、すぐに答えた。
「じゃ、あんまりうらやましくないでしょ?」
「本当に、好きな人いないの? じゃあさ、その人が他の女の子と楽しそうに話してたら何だか嫌な気分になる、とか、そういう人いない?」
 そう言われて、私は思い出した。
 あの人が、みさとと話しながら、ちょっと笑ってるのを見たとき、胸が苦しくなった。あの気持ち、何だったんだろ。
「……いるんだ?」
 うなずいた。
「それは、あたしがさっき挙げた人のうちの一人?」
 また、うなずいた。
 みさとが、私の肩をぽんぽん叩いた。
「何よ、両思いじゃない」
 私たちはふとんにくるまった。そして、みさとに、その人の名前を教えた。


 拍手お礼夢にお名前をちょこちょこと入れたものです。あー、若いのを書きたかったのです。あと、実験作でした。言い訳以上。
 短編の逆ハーがうまく書けない・・・。

           冬里
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