サイドカーつきのオートバイが庭にとまっている家に着いた。犬小屋もあり、そこに大きな犬がいる。 みさとがインターホンを押すと、はい、という返事と共にドアが開いた。スレンダーな体型の、ショートヘアーの、女の人だ。きれいな人だな、とはしばし見惚れた。
「あら、みさとちゃん。その子が噂のちゃんね?」
あわてて、挨拶をする。なぜか、顔が赤くなっていた。は、この人が弾平の母だということが信じられなかった。
一撃家訪問!家にあがり、ダイニング・キッチンに通された。
「座って。今、お茶用意するから」
キッチンのカウンター越しに、はるかがこちらを見つめた。興味深そうな目だ。
「で? 相談って何なの?」 みさとが軽く肘で小突いた。今日で二度目だ。初対面の人の前であの話をするのは少し気が引けたが、は病院で起こったことからこと細かに話した。はるかは、ところどころで相槌をうちながら聞く。
「ってことは、全ての原因はうちの弾平ね! あとで一発……」 呼ばれて、はい、と返事をした。まるで学校みたいに。
「ここはちゃんが折れるべきね」 そういえば、そんな気もする、とは思い出した。初めて荒崎小から戻ってきた時は、何もなかったのかと心配してくれた。嵐は、そこでが謝ったので、もう荒崎小には行かないと思ったのだろう。ところが、はクッキーを渡しに行った。俺の言うことが聞けないのか、という感じで嵐は怒ったのかもしれない。 「嵐くんて、プライド高いものねえ」 はるかが、つぶやいた。みさとも、うなずく。 「なかなか、自分から謝りそうにないし。仲直りしたいのなら、ちゃんが謝ってあげなさいよ。荒崎小に行ったってことで心配かけたんだから」 そうしよう、とは思った。こくん、とうなずいてその気持ちをはるかとみさとに伝えた。それを見て、はるかが微笑む。
「よし、じゃあお昼にしようか。その後でお菓子作りよ!」
もう一度、うなずく。 お昼からハンバーグなのが少し贅沢な気分がして嬉しい。 「弾平くんは?」 と聞くみさとに、はるかは、 「さあ? 珍念くんと特訓してるんじゃない?」
と返した。すごい家庭なんだな、と思う。
「ああ、かわいい子に囲まれてお菓子作りなんて、夢みたい」
はるかは本当に嬉しそうだ。
「これ。嵐くんに渡しなさいな」
きちんと謝る勇気がわいてきた。思わず微笑んでしまう。
「がんばってね、」
はい、とみさとは返事した。
「嵐くん」 呼ぶと、けげんそうな顔をして嵐が振り向いた。に気づくと、片方の眉をつり上げた。そして、立ち止まらずに先を歩こうとする。そうだ、ケンカの最中だから嵐も無視を決め込もうとしていたのだ。は嵐の後姿に向かって言った 「ごめんね」 ぴた、と嵐が歩くのを止める。続けては謝った。
「荒崎小に、勝手に行ったりして。練習も、皆一生懸命なのに、結構、抜けちゃったし」 嵐の声が聞こえた。え? と聞き返すと、もう一度聞こえた。 「もういい、って言っている。許してやる」 それを聞いては、心がみるみるうちに軽くなっていくのを感じた。 「本当に?」 嵐のそばに駆け寄り、カバンから袋を取り出した。カップケーキの入った、ラッピングしてある袋だ。 「じゃ、仲直りの印に」
と言って渡す。本当はお詫びの印に渡すつもりだったが、いいだろう。 「……その、俺も言いすぎだった」 嵐がぽつりとつぶやいたのを、は聞き逃さなかった。嵐くんが謝るなんて、明日は雨かも。などと思いながらは、にっこり笑った。
夕焼けに照らされて、長い影が道に映る。
『一撃家訪問!』:終
あ、タマ公とふれあうシーン書き忘れた!! なんか、はるかさん書きたかったんです。それだけです。(←ヲイ!) とりあえず、仲直りできた所で次回はスポコン、原作寄りの地区予選。 冬里
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