連盟公式スタジアムに着き、その人の多さに驚いた。
 いろんなユニフォームの、いろんな人たち。
 B・Aがその間を通り抜けていこうとすると、皆が道を譲ったのも印象的だ。
 は初めて公式戦を見る。
 少し胸がはずんだ。が、同時に不安な気持ちもわいてきた。



地区予選(前)





「B・Aは全国制覇のために結成されたクラブチームだ。今回の地区予選は当然、優勝しなければいけない。いいな?!」

 嵐の檄に全員が、おう、と気合の入った掛け声で返した。
 はその様子を見守っていた。

 思えば、皆、ずっと厳しい練習を続けてきたのだ。
 嵐とケンカして、仲直りしてからというもの、もできるだけ皆のサポートをしてきたつもりだ。ドジなので失敗することも多かったが。
 大丈夫、きっと勝ち進む。
 マネージャーである自分がそう信じないと。
 そう決めて、キッと正面を向く。開会式が始まる放送が流れた。B・Aのメンバーは移動しはじめた。も、補欠である二軍のメンバーと共に観客席へと移動する。

 呼ばれて振り向くと、みさとがいた。

「みさと、久しぶり! この前はありがとね」
「ううん、いいのよ。仲直りできたみたいね。観客席、一緒に行こう」

 二軍のメンバーが微妙な顔をしたが、気にせずにうなずいた。



 開会式は厳かに行われた。ここから見ると、何筋もの、色とりどりのラインが並んでいてきれいだ。黒いユニフォームのラインは、もちろんB・A。手を振りかけて、やめる。東審判長の話の途中だったからだ。
 途中で弾平らしき人がごそごそと落ち着きがなかったが、それでも無事に開会式は終わった。トーナメント表を組むための抽選会があるため、みんながバラつきはじめる。

「行こう、

 みさとが、下に行ってこの目でトーナメント表を確認しようと言う。は二軍のメンバーに、行ってくると告げてみさとについて行った。



 みさとは球小に合流してしまったので、仕方なくもB・Aを探した。人の多い中、うろついていると、いろんな人の視線を浴びる。

じゃないか」

 聞き覚えのある声が上のほうから聞こえた。見上げると、陸王だった。

「陸王くん」
「この前のクッキー、うまかったぜ」

 そう言って、陸王はを見つめた。はにっこり微笑み、よかった、と言った。

「よく、俺がピーナッツ好きだって分かったな」
「だって、練習中も食べてたじゃない」

 そうか、と陸王は目を少し細め、笑った。ライオンが笑ったら、こんな感じになるのかな、などとはぼんやり考える。

「で、誰かを探してるようだな」

 言われて、はっと気づいた。

「そうだった。嵐くんたちを探してたの」
「嵐なら、あっちにいたぜ」

 陸王が指す方向を見ると、人と人の間に高山の姿が見えた。
 ありがとう、と礼を言って去ろうとすると、手首をつかまれる。

「びっくりした。何?」
「……腕、治ったのか?」

 腕。そういえば、ケガをしていたのだった。いろんなことがあって、忘れていた。医者から包帯を外されて、だいぶ経ったように思う。

「うん、もう大丈夫」

 それを聞くと、陸王は手を離した。ほっ、と安心したような表情だ。

「よかったな。いきなり掴んだりして悪かった」

 ううん、と返事してから、陸王に手を振ってその場を離れた。



「陸王さん、あの子がお気に入りなんですねえ」

 陸王の後ろに白川が近づいて、言った。

「なんだかんだ言って、見てくれに弱いんですか」
「いや、違う」

 白川の言葉を陸王は制した。

の中身に惚れた」

 表情を変えずさらりと言う陸王を見て、白川の方が恥ずかしくなり、顔が赤くなった。



 高山に向かって、人をかきわけながら歩いていると、

様」

 と、声をかけられた。様って何? と思いつつ振り向くと、五十嵐だった。

「あら、お久しぶり」
「お久しぶりです。お元気でしたか」
「ええ。大河くんは出ないのね?」
「はい。しかし、我々だけでも頑張ります」

 どうしてさっきから敬語で話してるんだろう。が疑問に思っていると、五十嵐の後ろに他の聖アローズメンバーがやってきた。

「お久しぶりです、様」
「B・Aだけじゃなくて、僕達も応援してくださいね」

 東山と、楠木だった。
 みんな、どうして敬語で、しかも様をつけて呼ぶんだろう。
 気になるが、嵐たちと合流したいので、

「わかった、急ぐから後でね」

 と、無責任なことを言い残して手を振り、去った。
 ようやく高山に近づき、その場にいるB・Aメンバーと合流できた。しかし、嵐はそこにいない。宇佐美が、クジを引きに行ったと言って投票が行われている舞台を指す。見ると、嵐がちょうど、箱からクジを引いているところだ。引いたものを大会スタッフに渡した。

「一回戦、どこだろうな」
「どうせ、聞いたこともないようなチームだろ」

 緒方と不破が話しているところで、大勢のわっという驚きの入り混じった歓声があがった。舞台を見ると、ちょうど陸王がクジを引き終えて結果を見ているところだった。貼られたトーナメント表に、荒崎小の文字が書かれる。その横に、B・Aの文字があった。

「行こうぜ」

 服部が呼びかけ、それに応じて皆で舞台に近づいた。

 一回戦。B・A対荒崎小。

 その事実を改めて知った。
 皆が、舞台の下にいる嵐に近づく。嵐の向かいには、陸王がいた。その後ろには荒崎小のメンバーが立っている。B・Aと荒崎小が向かい合う形だ。
 すると、陸王が親指を立てた。サムズアップの形だ。それを動かし、親指をくいっと下げる。サムズダウン。良い意味ではない。

「一回戦から優勝候補どうしの対決だ」

 周りの人が盛り上がっている。
 嵐は陸王を睨みつけた。
 しばらく、互いが睨み合った後、背を向き合った。

「いずれにせよ、戦わなければならない相手だ。一回戦で当たったとはむしろ都合がいい。試合疲れしないうちから全力で戦えるからな」

 嵐が、メンバーに檄をとばす。
 頑張るぜ!
 皆が気合を入れた。
 大丈夫、必ず勝つわ。
 はそう信じた。
 ふと、荒崎小に目を向ける。すると、たまたま振り返っていた陸王と目が合った。陸王はをしばらく見つめ、ふっと笑った。
 陸王は、余裕があるみたいだ。はそれに気づいて、負けられない、と思った。

「みんな、」

 呼びかけると、全員がの方を向いた。

「必ず、勝ってね」

 念を押すように、声をかける。すると、皆が大きくうなずいた。
 気合が入ったところで、試合をするコートに移動し始める。観客席に戻ろうとするを、嵐が止めた。

「マネージャーは仕事があるだろう。特等席だ」

 コートの近くのベンチを指された。そこには、すでにタオルやスポーツドリンクなどが入ったバッグが置いてある。補欠として控えている二軍も座っていた。そのうちの誰かが運んできたのだろう。

 はうなずき、ベンチに向かった。



 やがて、荒崎小もコートに来た。両チームメンバー共、準備が完了する。コートに入って位置についた。
 観客が、その試合に注目していた。
 やがて、審判がコートに立つ。
 ジャンプボールのために、陸王と、緒方が中央に来た。審判がボールを高く、放り投げた。

「ゴーファイト!」

『地区予選(前)』:終

 ええと、地区予選でいろんな人に会ってチヤホヤされようイベントでした。って意味ないし!(←コラ!)
 あと、白川のこと、今まで白河って表示してましたね。もう、アホです。
 アホついでですが、原作が手元にないので荒崎対B・A戦を詳しく描けません。記憶力に頼ってみます。

      冬里